研究内容

            「物質変換反応場となる遷移金属錯体の創製」 を目指して、新規遷移金属錯体の合成および物性評価を行っています。  
            「物質変換」 すなわち「分子やイオンの化学結合の切り貼りによって、 より高価値な化合物に変換する」ことを、
              金属錯体上で行うことを目指して錯体を開発しています。

              天然では、金属を反応活性点とする多種多様な酵素(金属酵素)が、 常温・常圧の温和な条件下で、じつに
              巧妙に物質変換を成し遂げています。たとえば分子状窒素からアンモニア生成(窒素固定)を行う 根粒菌(窒素固定
              細菌)の持つ酵素として、鉄(Fe)と モリブデン(Mo)を活性点とする"ニトロゲナーゼ"が挙げられます。

              光合成でも、いくつもの金属錯体がそれぞれに重要な役割を果たしています。 光化学系(PS)IIの最初のステップの
              水の酸化反応は、 マンガン(Mn)とカルシウム(Ca)から成るクラスター化合物("OEC"; 酸素発生中心)が行って
              います。太陽光の吸収、水から取り出した電子を光化学系(PS)Iへと 送ることにもまた、 マグネシウム(Mg)や鉄
              を持つ化合物が関与しています。

              自然界の効率の良い反応は目を見張るものがあり、反応機構を理解して人工系に適用したいという気持ちに駆られます
              が、反応が速いことは同時に、その素過程をのぞき見て反応を理解することはとても難しい ことを意味しています。
              そこで着目するのが、第二遷移系列の金属、 ルテニウム(Ru)です。その多くが六配位八面体構造を溶液中でも安定
              にとり、且つ適度な反応性を有することから、多様な分子設計および均一系での反応評価に適するといえます。  

              近年では、高活性な物質変換反応場の創製の検討のため、より安価な 鉄やコバルト (Co)を中心金属とする遷移金属
              錯体の設計・開発も行っています。より詳しい研究内容は、「メンバー」ページのスタッフ部分をぜひご覧ください。