神澤研|生化グループ

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研究の概要

我々の研究室では多種の生物を材料とし、それら生物が持つ特徴的な生体関連物質(タンパク質・核酸)やその機能を生化学・分子生物学の手法を使って研究を行っています。卒業研究はそれぞれ独自のテーマを持ち、関連の深いテーマの人が集まってグループを構成し、大学院生を中心に協力して研究を進めています。

傾性運動と就眠運動

植物の目に見える運動として屈性と傾性があります。私たちはオジギソウを研究材料として傾性運動に関する研究を行ってきました。傾性の代表例がオジギソウの葉を触った時に見られるあの葉を閉じる運動です。オジギソウとよく間違えられる植物にネムノキがあります。最も有名なネムノキは"日立の樹= あの樹・何の樹・気になる樹"で知られるアメリカネムノキです。ネムノキは一日周期で夜に葉が閉じますが、オジギソウは一日周期の葉の運動(就眠運動)の他に、葉に触ると葉が閉じる運動(接触傾性運動)をします。これらの運動は運動器官である主葉枕(枝の付け根の部分の洋なし状の器官)の膨圧の変化が原因になって起こります。私達の研究室ではオジギソウが葉を閉じる際に、主葉枕内の”アクチン”と呼ばれるタンパク質からなる繊維構造がダイナミックに変化するのを観察しています(写真)。現在は、就眠運動と接触傾性運動のどこが同じで、どこが違うのか? ミヤコグサというマメ科のモデル植物を使い、分子生物学の手法で解明しようとしています。ちなみに植物の光合成に大事な孔辺細胞の開閉運動も同じ膨圧の変化が原因となっています。

葉枕

葉枕は傾性運動や就眠運動を支える特殊な組織です。葉枕では細胞や組織が特殊化し、機能を支えるための遺伝子が発現しています。私たちは葉枕に特異的に発現する遺伝子を網羅的な解析から明らかにし、現在は膨圧変化に影響を及ぼすような因子について、遺伝子の発現とその発現している場所の特定、さらにそれらの遺伝子を壊した際にどのようなことが起こるかなどを調べることで、葉枕の不思議にチャレンジしています。

水辺の植物

地球環境研究所の皆さんと協力しながら、水辺の植物に関する研究もしています。写真はサロベツ湿原を歩いている様子です。特別な許可をもらって入ることが出来ます。ここでは湿原に自生するミズゴケが地下5mまで堆積し、泥炭層を形成しています。しかし、一部は商業利用の為に掘り返され、その後再生のための努力が続けられています。自生する植物がどのようなストレスを受けているのか、また再生を促進させるにはどうしたら良いのか? まずは現地で調べることから始めています。

AFS三次元細胞培養

細胞はシャーレの上で培養された場合と、三次元的に培養された場合では異なる性質を示します。私たちは医療用デバイスの開発を目標に、三次元足場材料を研究材料として使っています。 年齢を重ねると、若い時には問題にならなかった事が重大な問題となることがあります。ちょっと躓いただけのつもりが、気が付けば骨折、生活の質(QOL)の低下が避けられないという事も珍しくありません。そんな社会に必要になるのが代替骨材料です。つまり、骨折や骨粗鬆症などお年寄りに多い病気などに、この代替骨材料を使うことで、なるべく早くいつもの生活ができるようにしようというわけです。この仕事は明治大学の相澤博士との共同研究です。最近では、骨再生の研究を発展させ心筋の組織再生に取り組んでいます。

心筋細胞

細胞の機能をGFPの様な蛍光タンパク質を用いて可視化することが出来れば、医療用デバイスへの応用だけでなく、細胞の機能の詳細を理解するために役に立ちます。もう少し詳しく言うと、例えば培養皿の上で心筋の細胞を培養し、そのまま拍動させることが出来ます。しかし、三次元の足場材料の中で心筋細胞がミニ心臓を作っていたとしても、簡単にはその様子を観察することはできません。しかし、心筋の拍動が色の違いで分かれば簡単に観察することが出来ます。私たちは、心筋の中にカルシウムの濃度に応じて明滅する蛍光タンパク質を入れています。そうすると心筋の興奮に合わせてカルシウムが細胞内に出てくるので、明るくなったり暗くなったりと信号を捉えることが出来ます。これをさらに使いやすくすれば、新しい薬の発見に役にたつこと間違いなしです。

創薬基礎研究

全ての薬は毒でもあり得ます。学内の合成を主とする先生と共同し、細胞に対する毒性の見極めと、薬としての可能性の見極めを分子細胞生物の視点から明らかにしようとしています。大きな目的の一つは新規抗ガン薬の創製であり、金属錯体が細胞に与える影響を調べています。近年ガンに対する様々な分子標的治療薬が開発され、その高い効果が注目を集めています。その一方で治療費の高騰が国の経済を圧迫することにもなっています。私たちは他分野研究者が協力することでより安価な治療薬の開発を目指しています。本研究の一部はJSTのA-SETPトライアウト型への採択として新しい展開を迎えています。

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