生分解性ポリマーは、一般的に「通常の使用状況下では一般のプラスチックと同様に使えて、使用後は分解され、最終的には二酸化炭素(炭酸ガス)と水に変換され、自然に還るプラスチック」と定義されています。当研究室では、高分子構造と生分解性の基礎メカニズムを解析するとともに、その生分解性を自在に制御できる新規機能性材料の開発を行っています。
酵素触媒重合
生分解性ポリマーの代表格であるポリ乳酸は、金属触媒を用いた高温高真空下で合成されており、残存触媒による環境、生体への悪影響が懸念されています。 生分解性ポリマー材料を導入する目的は、持続可能な社会システムを確立することであるにも関わらず、材料の生分解性のみに目を奪われてしまっているのが現状です。そこで私達のグループでは、生体触媒であるリパーゼに着目し、温和な条件でポリ乳酸の合成を行いました。さらに、より環境調和型な高分子合成プロセスの構築を目的として、再利用可能であるイオン液体を反応媒体としたポリ乳酸合成を行いました。イオン液体中において、従来法よりも短時間で高分子量体のポリ乳酸を得ることに成功しています。
精密重合法を用いた超撥水性材料(人工血管)の作製
ナノオーダーで高次構造制御された生分解性ポリマーは、高付加価値を有する新規な生体材料として、人工血管などへの応用が期待されます。本研究グループでは、ポリ乳酸 と高い疎水性を有するポリフルオロスチレンからなるジブロック共重合体を精密合成し、ミクロ相分離構造を発現させ、超撥水性を有する多孔質膜を作製しました。
生分解性ポリマーを用いた人工骨材料の作製
生体骨はハイドロキシアパタイトとコラーゲンなどからなり、硬くても柔軟性のある優れた力学的特性をもつ材料です。骨疾患治療の迅速化と簡便化を目指し、再手術による取り出し不要な人工骨材料として、アパタイトと生分解性ポリマーの複合体を検討しています。本研究グループでは、生体骨に見合った曲げ強度と弾性率を有する人工骨材料を作製し、動物試験により生体適合性を評価しています。