有機無機ぺロブスカイト型化合物

 有機あるいは無機単独では得られない物性の期待から、有機‐無機複合材料の開発が盛んに行われています。粒子レベルから、分子レベルまで、あらゆる階層での複合化が行われていますが、特に、ナノレベルでの複合材料は、環境、資源、エネルギー分野への応用が期待されています。上智大学高分子研では、ナノ複合材料として、有機‐無機ぺロブスカイト化合物に着目しています。



 無機半導体の電子構造は、その大きさに依存して変化します。特に、0次元、1次元、2次元方向にサイズを制限した低次元系半導体は、バルクとは異なる優れた特性を示す為、光学材料への応用研究が盛んに行われています。低次元半導体は、CVD法など特殊な装置を用いて作製されてきましたが、化合物の自己組織性を利用して、このような構造を自在につくることが可能となってきました。その一つとして、注目を集めているのが、有機‐無機ぺロブスカイト型化合物です。有機・無機層状ペロブスカイト型化合物(RNH3)2PbX4 (R: アルキル基、X: ハロゲン)は、絶縁性の有機層(RNH3+)と無機半導体層(PbX64-)が交互に積層した構造を自己組織的に形成します。有機層と無機半導体層のバンドギャップ差が非常に大きいため、有機層がバリア層、無機層が井戸層となった量子井戸構造とみなすことができます。この無機層中に閉じ込められた励起子により、室温でも安定な発光や高い三次非線形光学特性を示します。


 有機無機ぺロブスカイト化合物に用いる有機アミンは種々変化させることができ、0~2次元まで量子閉じ込め構造をコントロールすることができます。また、最近では、有機層に、フラーレンやオリゴチオフェン、ポリジアセチレンのような機能性分子を導入し、有機‐無機層間の相互作用により、効率的な電荷輸送や光電流の実現を可能とする新規機能材料の開発を行っています。