一般に物質は常温、常圧のもとで固体、液体、気体の三態のいずれかの状態で存在しており、物質の状態は温度や圧力に依存して変化します。ところが、一般の物質とは異なり結晶(固体)から液体には直接に転移せず、結晶と液体の両方の性質を示す中間の状態を経て液体になる物質もあります。中間相を示す物質には、分子配向に秩序をもつ液晶と分子の重心位置に秩序をもつ柔粘性結晶(プラスチッククリスタル)があります。

プラスチッククリスタル

 プラスチッククリスタルは、分子長軸方向に規則的に整列した三次元結晶格子から構成されるが、分子種もしくは分子イオンのレベルでは配向的、回転的な無秩序さが存在する物質として定義されます。これらの物質群は、通常の結晶状態よりも高い自由度を持つため、より高いエントロピーを示します。その無秩序さの結果として有意な運動が可能となり、高い可塑性と構成成分の高い拡散性を示すことが特徴として挙げられます。イオン性化合物の場合には、イオン伝導相の形成につながるため、目的イオンの輸送場として興味深い材料です。しかし、有機イオン性プラスチッククリスタルをイオン伝導体とする研究は始まったばかりであり、構造的知見は極めて少ないのが現状です。本研究室では、プロトンまたはリチウムイオン伝導体となるプラスチッククリスタルの探索および評価を精力的に行っています。これらを主構成成分とする電解質材料は、従来系を凌駕する性質を示すことが期待されています。